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起業・開業時に必要な保険【まとめ】個人事業主・法人向けリスク対策ガイド

起業・開業時に必要な保険のイメージ

開業にあたっては、事業の成功だけでなく万一のリスクへの備えも重要です。

保険の手続きや加入は後回しにされがちですが、万一のときに事業や生活を守る心強いセーフティネットとなります。本記事では、起業直後に確認すべき社会保険と事業保険の違いから、具体的な保険の種類選び方のポイントまで解説します。内容は個人事業主・法人を問わず役立つ汎用的な情報になっており、業種も限定していません。開業時のリスク対策にぜひお役立てください。

社会保険と事業保険の違い

社会保険と事業保険の違いを考えているイメージ

まず、公的な社会保険と民間の事業保険の違いを押さえましょう。

社会保険とは、病気や失業、高齢など生活上のさまざまなリスクに備えるために国が設けた公的な保障制度です。具体的には健康保険・年金保険・介護保険・労災保険・雇用保険が含まれ、法律で加入条件が定められており、条件に該当すれば個人(事業主・従業員)や会社は加入が義務付けられています。社会保険は強制加入で、保険料の一部を国や雇用主も負担することで、加入者とその扶養家族の生活基盤を支える役割があります。

一方、事業保険(法人保険・企業保険とも呼ばれます)は、企業や事業主が任意で加入する民間の保険で、事業活動に伴う様々なリスクに備えるためのものです。例えば、会社の財産が火災で被害を受けた場合の損害や、事業中に第三者に損害を与えて発生する賠償責任など、公的保険ではカバーしきれないリスクに対応します。

事業保険は会社ごとに必要な種類や補償内容が異なり、事業規模や業種に合わせて自由に選択・加入できるのが特徴です。つまり、社会保険が従業員や家族の生活保障を目的とするのに対し、事業保険は事業そのものを守るための保険と言えます。

社会保険の概要

健康保険の切り替え手続きのイメージ

事業を始めるにあたり、まずは社会保険の手続きを確認しましょう。

個人事業主と法人では加入する制度に違いがありますが、いずれの場合も退職後の公的保険の切り替え労働保険の手続きが必要です。本章では、退職後の健康保険・年金の切り替え方法と、雇用保険・労災保険の概要について解説します。

退職後の健康保険・年金の切り替え方法

会社員から独立して個人事業主になる場合や、一人社長で法人を設立する場合、まず必要なのが健康保険年金の切り替え手続きです。会社員時代は会社を通じて社会保険に加入していましたが、退職するとその資格を失うため、自分で新たに加入し直す必要があります。

健康保険の切り替え:退職後は原則としてお住まいの市区町村の国民健康保険に加入します。ただし場合によっては、以下のような選択肢もあります。

  • 任意継続被保険者制度の利用:
    起業前に勤めていた会社の健康保険を最長2年間継続できる制度です。退職後20日以内など一定の条件がありますが、保険給付内容を維持したまま加入できます。ただし保険料は在職時の2倍(会社負担分も自己負担となるため)になる点に注意が必要です。
  • 配偶者の被扶養者になる:
    配偶者が会社員等で厚生年金保険や健康保険に加入している場合、その扶養に入ることで自分自身の保険料負担なしに健康保険・年金を継続することも可能です。収入要件(年間130万円未満など)を満たせば、国民健康保険や国民年金に代わる選択肢となります。
  • 国民健康保険組合への加入:
    業種によっては同業者組合が運営する国民健康保険組合(国保組合)があり、該当業種の人はそちらに加入できるケースもあります。一般の国民健康保険に比べ保険料が安かったり給付が手厚い傾向がありますが、業種や地域ごとに条件が異なります。

いずれにせよ、会社員を退職して起業した場合は速やかに手続きを行いましょう。会社の健康保険を辞めた後は原則として国民健康保険への加入義務が生じます。国民健康保険の加入手続きは市区町村の窓口で行い、退職時に会社から発行される健康保険資格喪失証明書などを提出します。

年金の切り替え
年金についても同様に、会社員時代は厚生年金に加入していましたが、退職後は自営業者として国民年金(第1号被保険者)に切り替える必要があります。日本国内に住む20歳以上60歳未満で厚生年金に入っていない人は国民年金への加入が義務付けられており、会社員を辞めて起業した場合は忘れずに切り替え手続きを行いましょう。手続きはお住まいの市区町村の国民年金窓口で行い、年金手帳(基礎年金番号がわかるもの)などを提出します。なお、先述の配偶者の扶養に入る場合は国民年金も第3号被保険者(扶養配偶者)として扱われ、自身で保険料を納める必要はありません。

法人設立の場合
法人を設立して代表者(社長)になるケースでは、社長1人だけで従業員がいなくても社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務が発生する点に注意してください。法人は従業員数や給与額に関係なく強制適用事業所となるため、代表者自身も会社の社会保険に加入し、保険料を会社と折半で負担します。

なお、個人事業主であっても常時一定数以上(※原則5人以上)の従業員を雇用する事業所は強制適用となり、事業主自身も健康保険・厚生年金への加入義務が発生する点に注意しましょう。個人事業から法人化する場合は、この社会保険料負担の増加も見込んでおきましょう。

雇用保険・労災保険の概要

次に、雇用保険労災保険について押さえておきましょう。

これらは労働者のための保険制度(総称して労働保険)で、原則として事業主本人は加入できません。しかし従業員を一人でも雇用する場合、事業主は所定の手続きを行い労働保険に加入する義務があります。

  • 雇用保険は、従業員が失業した際に生活を支える失業手当(基本手当)を支給したり、在職中の教育訓練給付や育児休業給付金などを支給する制度です。主に労働者の失業・離職に伴う生活リスクに備える保険であり、一定の勤務形態(31日以上の雇用見込みと週20時間以上の勤務など)で雇用する全ての労働者が対象となります。事業主は労働者を雇用したらハローワークで雇用保険の加入手続きを行い、従業員の給与から保険料を天引きして納付します。
  • 労災保険は、業務上の事故や通勤中の災害によって労働者がケガをしたり病気になった場合に、療養費の給付や休業補償給付(休業中の賃金補償)、障害年金、遺族年金等を行う公的保険です。従業員を1人でも雇えば事業規模に関係なく適用され、保険料は全額事業主負担で労働基準監督署を通じて納付します。労災保険に加入していれば、万一従業員が仕事中に負傷した際、治療費や休業中の補償が公的に賄われ、事業主の負担も軽減されます。

事業主自身への適用
個人事業主や法人代表者といった事業主本人は、上記のように雇用保険・労災保険の一般的な適用対象にはなりません。つまり、自分が失業しても雇用保険から失業手当は受け取れず、自分が仕事中にケガをしても労災保険から補償は受けられないということです。

ただし労災保険の特別加入制度があり、中小事業主や一人親方(従業員を雇わずに事業を行う人)が労働者に準じて労災保険に加入することが認められる場合があります。特別加入できるかは業種や事業規模によって異なりますが、例えば建設業の一人親方や海外出張の多い経営者など、高い労災リスクに晒される事業主は加入を検討すると良いでしょう。特別加入について詳しくは所轄の労働基準監督署に相談できます。

事業リスクに備える保険

事業リスクに備える保険を相談しているイメージ

社会保険で従業員や自分自身の生活上のリスクに備えたら、次は事業そのもののリスクに目を向けましょう。

創業した事業を継続・発展させていく上で、火災や事故、トラブルによる損害リスクは常に存在します。ここでは、代表的な事業用の保険である火災保険賠償責任保険の内容を詳しく見た上で、その他の休業補償や自動車保険などについても紹介します。

火災保険・賠償責任保険の詳細

火災保険(事業総合保険の財産補償部分)とは、火災や風水害などによって建物や設備、商品などの財産に生じた損害を補償する保険です。事務所や店舗、倉庫を構える場合は必須の保険と言えます。火災保険といっても補償範囲は火災だけに留まらず、一般的に落雷・爆発、水災(台風や豪雨による浸水)、風災・雹災、外部からの物体衝突、漏水、盗難被害など広範囲の偶然事故による損害をカバーします。加入の際はどこまで補償されるか保険会社のパンフレット等で確認し、必要に応じて補償内容を選択します。

なお、日本は地震大国ですが地震保険(地震・噴火・津波による損害を補償する保険)だけは火災保険に自動付帯されないため、別途加入が必要です。火災保険では地震による火災や倒壊の損害は原則補償されませんので、地域性やリスクに応じて地震保険もセットで検討しましょう。

賠償責任保険は、事業活動中に他人(第三者)の身体や財産に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合にその賠償金等を補償する保険です。たとえば店舗でお客様が転倒してケガをした、納品した製品の欠陥により取引先に損害を与えてしまった、業務中に他社の設備を誤って破損させてしまった、といったケースで活躍します。賠償額が高額になったり訴訟になった場合でも、保険に入っていれば賠償金や争訟費用を保険金でカバーできるため、事業継続にとって心強い支えとなります。

賠償責任保険にもさまざまな種類があり、事業形態や業種に合わせて特約や専門保険が用意されています。自社の業務内容に即したプランを選ぶことで、たとえば製造物責任(PL)や業務過誤、請負作業中の事故など固有のリスクにも対応可能です。事業規模が小さいうちは一般的な「施設賠償責任保険」や「請負業者賠償責任保険」などから検討し、事業拡大に伴って補償内容を見直すと良いでしょう。

その他のリスク対策(休業補償保険、自動車保険など)

上記の火災・賠償保険以外にも、事業を取り巻く様々なリスクに備える保険があります。必要性に応じて次のような保険も検討しましょう。

  • 所得補償保険・就業不能保険(いわゆる休業補償保険):事業主や経営者自身が病気やケガで長期間働けなくなった場合に、休業中の所得(収入)を補償してくれる保険です。個人事業主は会社員と違って健康保険から傷病手当金(病気やケガで働けない期間の生活補償)が支給されないため、自身の休業リスクに備えて民間の保険に加入しておくと安心です。例えば就業不能保険に加入しておけば、治療に専念している間の生活費や事業継続費用の一部を保険金で賄うことができます 。公的な障害年金だけに頼るより手厚い保障が得られるため、特に一家の生計を担う経営者は検討したい保険です。
  • 休業損害保険(営業継続保険):こちらは事業所や設備が災害・事故などで損壊し、一時的に営業できなくなった場合の営業損失を補償する保険です。火災保険の特約として付けられる場合もあります。例えば火災や風水害で店舗が被災し数ヶ月休業せざるを得なくなった場合に、休業期間中の利益減少分や従業員の人件費、代替施設の賃借費用などを補填してくれます。中小企業にとって災害による長期休業は死活問題になりかねませんが、この保険で資金繰りを支えることができます。
  • 自動車保険:営業車や社用車を使う事業では、自動車保険への加入も必須と言えます。自動車事故による対人・対物賠償リスクは極めて高額になる可能性があるため、事業で車両を使用する場合は自賠責保険(法律で義務付けられた強制保険)に加えて十分な補償額の任意保険に加入しましょう。社有車だけでなく、自家用車を業務で使用するケースでも保険会社に「業務使用」であることを申告し、補償内容を確認・変更する必要があります。万一社員が運転する社用車で事故を起こした場合でも、事業者として賠償責任を果たせるよう備えておきましょう。

この他にも事業内容や契約形態によっては、取引先の倒産に備える信用保険や、役員が万一に備える経営者向け生命保険、従業員の福利厚生を兼ねた中小企業退職金共済など、検討すべき保険商品は多岐にわたります。自社のリスクプロフィールに応じて、必要な保険を取捨選択していきましょう。

業種ごとの補足情報

業種ごとの保険のイメージ

保険の必要性や適切な種類は、事業の内容・業種によっても異なります。基本的な考え方はこれまで述べた通りですが、業種特有のリスクにはそれに対応した専門的な保険が用意されている場合があります。いくつか例を挙げてみましょう。

  • 建設業・工事業
    高所作業や重機の操作を伴う建設業では、墜落事故など労災のリスクが高くなります。また、工事中にお客様から預かった建物やリース機材を壊してしまうリスクもあります。このような業種には、労災保険の特別加入はもちろん、工事現場での事故による損害を補償する請負工事保険や、受託物(預かり物)の損害賠償に備える特約などが適しています。
  • 製造業・食品業
    自社の商品や製品が原因で第三者に被害を与える製造物責任(PL)のリスクがあります。特に食品や飲食業では食中毒事故などが典型例です。こうした場合、先述の賠償責任保険の中でもPL保険(生産物賠償責任保険)に加入することで、製品や提供した飲食物が原因で発生した損害賠償請求に対応できます。食品メーカーやレストランなどは必須の保険と言えるでしょう。
  • 医療・士業・コンサルタント等
    専門性の高いサービス業では、提供したサービスや助言によって損害が生じる業務上過誤のリスクがあります。医師や弁護士であれば専門職責任保険(医療賠償責任保険、弁護士賠償責任保険など)、コンサルタントや税理士であれば業務過誤保険に加入し、万一の訴訟や損害賠償に備えておくことが望ましいです。
  • IT業・情報管理業
    顧客の個人情報や機密データを扱う業種では、情報漏えいやサイバー攻撃による損害リスクが近年高まっています。こうした企業には、サイバー保険や情報漏えい賠償特約などが提供されており、事故発生時の調査費用や損害賠償、信用回復のための費用をカバーできます。
  • 運送業・物流業
    トラック運送業などでは、自動車保険に加えて運搬中の貨物に対する貨物保険や、物流業者向けに特化した賠責保険があります。またドライバーが個人事業主(一人親方)の形態であれば労災保険特別加入も検討すべきです。

このように、業種ごとに考慮すべきリスクと備えるべき保険があります。

業界団体によっては独自の共済保険制度を用意している場合もありますので、自分の業種に関連する情報を収集しましょう。過去の事故例やトラブル事例を調べ、自社にも起こり得るリスクかどうか検討することが大切です。その上で、必要と感じるものは専門の保険代理店や共済組合に相談し、最適な保険商品を紹介してもらうと良いでしょう。

保険の選び方と加入のポイント

加入する保険を検討している起業家のイメージ

最後に、どのように保険商品を選び加入していくか、そのポイントを整理します。

まず大前提として、法律で加入が義務付けられている保険(社会保険や自動車の自賠責保険など)には必ず加入することが必要です。その上で事業規模や内容に応じて任意の保険を検討することになります。以下のポイントを参考に、自社に合った保険プランを見極めましょう。

  1. リスクと加入目的の明確化
    まず、自社の事業活動におけるリスクを洗い出し、どのリスクに対してどんな保障が必要かを明確にします。リスクの発生頻度や影響度を考慮し、優先順位を付けることで、本当に必要な保険が見えてきます。もし自社だけではリスクの分析が難しい場合は、法人保険の取扱いに詳しい保険コンサルタントやファイナンシャルプランナーに相談すると良いでしょう 。専門家と一緒に検討することでリスクが整理され、過不足のない保障を選びやすくなります。
  2. 事業計画に合わせた保険選び
    現在の事業内容や規模だけでなく、将来的な事業計画も見据えて保険を選ぶことが重要です。例えば今後従業員を増やす予定があるなら、労災保険への特別加入や福利厚生制度の導入も検討に入れるべきでしょう。また、新たな事業領域に進出する計画がある場合、その分野特有のリスクに対応できる保険商品(製造業への進出ならPL保険、海外展開なら輸出保険など)の情報収集も必要です。事業の成長に伴いリスク状況は変化しますので、現在だけでなく将来を見据えた保険設計を心がけましょう。
  3. 環境変化に対応できる柔軟性
    契約後も環境の変化に応じて見直しや調整ができる柔軟な保険を選ぶこともポイントです。事業を取り巻く環境(経済状況や法規制、市場動向など)は変化しますし、会社の規模拡大や縮小、新商品の開発など内部要因も変わり得ます。その際、契約内容の変更や特約追加によって柔軟に対応できる保険だと安心です。例えば売上高や従業員数の増減に応じて補償額を見直せる商品や、毎年契約更新時に保障内容を調節できるタイプの保険があります。長期契約の場合でも定期的に代理店と相談し、現在の実態に合った内容になっているかチェックしましょう。
  4. 保険料と補償範囲のバランス
    保険は万一の備えとはいえ、支払う保険料が事業の負担になりすぎては本末転倒です。保険料と補償範囲のバランスを取り、無理のない保険料で継続加入できるプランを選びましょう。法人向けの保険は補償額が大きく保険料も高額になりがちですが、必要以上の過剰な補償は避け、優先度の高いリスクに絞ってカバーすることが重要です。なお、支払った損害保険料は事業経費として計上でき、一定額まで損金算入(費用処理)も可能です。節税効果ばかりに目を向けず、あくまで必要な保障に見合った適正な保険料を心掛けましょう。

以上のポイントを踏まえつつ、具体的な保険商品を選定していきます。

保険会社や代理店から見積もりを取り、補償内容・免責事項・保険金額(限度額)・保険料を比較検討してください。社会保険については行政手続きになりますが、わからない場合は地域の社会保険労務士に依頼する方法もあります。同様に、民間の保険選びで迷ったら信頼できる保険代理店保険相談窓口を活用しましょう。プロの客観的な視点からアドバイスを受けることで、網羅的にリスク対策を講じることができます。

まとめ(開業時の保険見直し・加入ポイント)

開業に際して確認すべき保険は、公的な社会保険と民間の事業保険に大別されます。社会保険は法律で加入が義務付けられた保障制度であり、退職後の健康保険・年金の切り替えや、従業員を雇用する場合の雇用保険・労災保険の手続きなど、忘れずに対応すべき重要な項目です。一方、事業保険は任意加入ですが、火災保険・賠償責任保険を中心に事業継続へ備えるものが多く、業種や事業規模に応じて必要な補償を選択することが大切です。

保険を選ぶ際は、自社のリスクを洗い出し、「どのリスクにどの保険で備えるか」を明確にしましょう。法律で義務付けられた保険(社会保険や自動車の自賠責保険など)は確実に加入し、その上で事業内容に即した任意保険を検討します。補償範囲と保険料のバランスも考慮し、無理なく継続できるプランを選びましょう。また、創業時に加入した保険も事業の成長や環境変化に合わせて定期的に見直すことが重要です。必要に応じて専門の保険代理店や社会保険労務士に相談し、漏れのない万全なリスク対策を心がけてください。

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