バックオフィス業務とは、企業活動を裏から支える経理・人事・総務などの事務作業全般を指します。特に「勤怠管理」「会計ソフト」「給与支払い」などの分野はあらゆる業種で必要不可欠です。これらの業務を効率化しないと、担当者に大きな手間がかかり、ヒューマンエラー(ミス)の増加やコスト増につながります。そこで本記事では、バックオフィス業務を効率化するためのポイントを解説します。初心者の方にも分かりやすく、具体的なシステムのメリット・デメリット、費用目安まで紹介します。
バックオフィス業務の概要

バックオフィス業務には、社員の勤怠(出退勤)管理、会社のお金の出入りを管理する経理・会計処理、そして毎月の給与計算・支払いなどがあります。これらは直接売上を生む業務ではありませんが、会社運営の土台として非常に重要です。
- 勤怠管理:
社員の勤務時間や残業時間、有給休暇の取得状況などを記録・管理すること。適切な勤怠管理は労務コンプライアンス(労働基準法の遵守)のためにも必要です。 - 会計処理(経理):
日々の取引を帳簿に記録し、月次・年次の財務状況を把握すること。正確な会計は会社の健全な経営判断や税務申告に直結します。 - 給与支払い:
毎月の給与計算と支払い、および給与明細の発行。社会保険料や税金の控除計算も含まれます。
これらを効率化しない場合のデメリットは大きいです。例えば、タイムカードを手作業で集計していると集計ミスが起きたり、残業代の計算漏れが発生する恐れがあります。会計や給与を手作業のまま放置すると、数字の転記ミスで重大なミスにつながったり、作業に膨大な時間がかかって人件費(残業代など)が増加する可能性があります。また、担当者が一人に集中していると、その人が休んだとき業務が止まってしまうリスクもあります。したがって、バックオフィス業務はできるだけシステムを活用して効率化し、手間とミス、コストの削減を図ることが重要です。
各システムの詳細とメリット・デメリット

バックオフィス業務を効率化するために、近年はさまざまなITシステムやソフトウェアが利用されています。それぞれの代表的なシステムについて、その役割や導入メリット、考えられるデメリットを見ていきましょう。
勤怠管理システムの役割と導入メリット
勤怠管理システムは、従業員の出退勤時刻をデジタルに記録・集計するための仕組みです。タイムカードや出勤簿をシステム化することで、誰が何時に出社・退社したかを自動で蓄積します。例えば、社員がICカードやスマホをかざして打刻すれば、その情報がリアルタイムでクラウド上に保存されます。
主なメリットは以下の通りです。
- 業務効率化:
集計作業が自動化され、月末の勤怠集計や残業時間の計算がボタンひとつで完了します。担当者の手作業を大幅に削減できます。 - ミス防止:
人手による入力ミスや計算ミスを防ぎ、正確な勤怠データに基づいて給与計算ができます。不正打刻の防止機能(例えばGPS打刻やカメラ付き打刻)を備えるシステムもあります。 - リアルタイム管理:
管理者は従業員の勤怠状況をリアルタイムで把握可能です。残業が一定時間を超えそうな社員をアラートで知らせる機能などにより、長時間労働の是正にも役立ちます。 - ペーパーレス:
紙のタイムカードや出勤簿が不要になり、保管スペースや印刷コストも削減されます。
導入にあたってのデメリットや注意点としては、システム利用料が発生する(一般的に「1人あたり○円/月」のクラウドサービスが多い)点や、初期設定・社員への周知に手間がかかる点が挙げられます。しかし、これらのコストや手間は上記メリットによって十分回収できるケースがほとんどです。
会計ソフトの種類と利便性
会計ソフトは、日々の経理業務をパソコン上で行えるようにしたソフトウェアです。売上や経費の仕訳入力、帳簿作成、試算表や決算書の作成までを自動化・効率化できます。会計ソフトには大きく分けてクラウド型とオンプレミス型(インストール型)の2種類があります。
- クラウド型会計ソフト:
インターネット経由でサービスにログインして利用するタイプです。ソフトを自分のPCにインストールする必要がなく、Webブラウザやスマートフォンアプリから利用できます。複数人で同時にアクセスでき、データもクラウド上に安全に保管されます。自動アップデートで常に最新の税制や機能が使えるのも利点です。特に小規模企業や個人事業主に人気で、月額料金を支払えば手軽に使い始められます。銀行口座やクレジットカードと連携して自動で明細取り込み・仕訳提案をしてくれるなど、便利な機能も豊富です。 - インストール型会計ソフト:
自社のPCやサーバーにソフトを導入して使うタイプです。古くからある方式で、「買い切り型」のソフトウェアが多く、一度購入すれば毎月の利用料はかかりません(※法令改正対応のバージョンアップ費用などが別途発生する場合あり)。自社内にデータを置ける安心感や、インターネット環境に左右されず使えるメリットがあります。ただし、ソフトのインストール作業やバージョン管理は自社で行う必要があり、利用できる端末も限定されます。
会計ソフト導入のメリットは、手書き帳簿やエクセル管理と比べて圧倒的に効率が上がることです。伝票入力をすると、仕訳が自動で反映されます。貸借対照表や損益計算書も即座に作成されるため、経理処理のスピードアップとミス防止が実現できます。消費税の計算や請求書・見積書の発行もソフト上で簡単にできるため、経理担当者の負担が軽減します。また、クラウド型であれば税理士や会計事務所とデータ共有しやすく、専門家のチェックやアドバイスを受けやすいという利点もあります。
一方、デメリットとして考えられるのはコスト面です。クラウド型は月額料金が発生し、機能が多い上位プランほど料金も上がります。インストール型は初期にまとまった購入費用が必要です。また、ソフトの操作に慣れるまで時間がかかったり、専門用語の理解が必要な点も初心者にはハードルとなるかもしれません。しかし現在の会計ソフトはマニュアルやサポートも充実しており、初心者向けの画面設計になっているものも多いので、基本的な操作さえ習得すれば難しく考えすぎる必要はありません。
給与支払いシステムの選び方と利点
給与支払いシステム(給与計算ソフト)は、社員の給与計算業務をサポートするシステムです。勤怠データや人事情報(基本給、手当、控除額など)をもとに毎月の給与支給額・控除額を自動計算し、給与明細の発行や振込データの作成まで行います。給与計算は税金や社会保険料の控除計算など専門知識が必要な複雑な作業ですが、システムを使えば最新の法令に沿って正確に処理されるため安心です。
給与計算システムを選ぶ際のポイントは以下のような点です。
- 自社の規模や形態に合ったものか:
社員数が少ない場合は低価格帯のシンプルなサービス、大企業なら人事管理機能まで統合されたシステムなど、規模に応じた選択が重要です。法人企業向けと個人事業主向けでプランが分かれているソフトもあります(個人事業主で従業員がいない場合、基本的に給与計算システムは不要です)。 - 勤怠システムや会計ソフトとの連携:
勤怠管理システムのデータを直接取り込んで残業代を自動計算したり、会計ソフトに給与仕訳を連携できると二重入力の手間が省けます。同じメーカーの関連ソフトを組み合わせると連携がスムーズなケースが多いです。 - クラウドかオンプレミスか:
こちらもクラウド型が主流になりつつあります。クラウド型給与計算ソフトは法改正(所得税率の変更等)にも自動でアップデート対応してくれるため、常に最新の計算が可能です。
メリットとして、給与計算に要する時間が劇的に短縮され、計算ミスも防げます。例えば残業代や深夜手当の割増率、社会保険料率なども設定しておけば自動計算されるため、担当者は確認するだけで済みます。毎月決まった時期に発生する給与計算業務をスムーズに終わらせられるので、本来注力すべき他の業務に時間を充てられます。給与明細も紙ではなくオンラインで配布する仕組みにすれば、社員へ素早く配信でき、用紙や印刷のコストも削減できます。
一方、デメリットや注意点は、やはりこちらもソフト利用料がかかる点です。ただし給与計算ソフトも1人当たり数百円~数千円程度/月の料金設定が多く、手作業にかかる人件費を考えれば十分に元が取れるでしょう。また、初期設定で社員情報や勤怠ルール(就業規則に基づく計算条件)を登録する手間はありますが、これも一度設定してしまえば毎月自動計算されるため、長期的には効率化のメリットが大きいです。
クラウド vs オンプレミスの違い
最後に、システム選定の際によく話題に上がるクラウド型とオンプレミス型の違いについて整理します。
- クラウド型( SaaS サービス):
ベンダー(提供会社)のクラウドサーバー上でシステムを利用します。インターネット経由でログインするため、会社だけでなく自宅や出先からでもアクセス可能です。初期費用が低く抑えられ、利用したい期間だけ契約すれば良いのでスモールスタートに適しています。また、システム保守やセキュリティ対策はベンダー側で行ってくれるため、ユーザー企業は常に安心して使えます。デメリットとしてはネット環境に依存するため、インターネット障害時にはシステムを使えない点や、月額費用が永続的に発生する点が挙げられます。しかし多くのクラウドサービスは高い稼働率・セキュリティ水準を維持しており、アップデートも自動なので、総合的に見るとメリットが大きいでしょう。 - オンプレミス型(自社導入型):
自社のサーバーやPCにソフトウェアをインストールして運用します。カスタマイズ性が高く、自社独自のルールに対応した設定変更などが柔軟にできる場合があります。また、社内ネットワークだけで完結するためオフライン環境でも使え、データを社内に留めておける安心感もあります。デメリットは初期導入にまとまったコストと時間がかかることです。システム保守やバックアップも自社で対応する必要があり、IT部門のサポートが不可欠です。また、ソフトのバージョンアップ対応を怠ると法令変更に追随できなくなるリスクもあります。
現在では、多くの中小企業ではクラウド型を選ぶケースが増えています。例えば勤怠管理や会計ソフトもクラウドサービスの利用が一般的になりつつあり、オンプレミス型は特定の要件(高度なカスタマイズやオフライン環境下での利用など)がある場合に検討する形です。自社の状況に合わせて両者の特徴を踏まえ、最適な方式を選びましょう。
費用の目安

各種バックオフィス効率化システムの費用感を、一般的な価格帯で比較します。サービスやプランによって幅がありますが、だいたいの目安として参考にしてください。
システム | 初期費用 (導入時) | 月額費用 (目安) | 年額費用 (目安) |
---|---|---|---|
勤怠管理システム | 0円(※機器導入時は別途) | 100~500円/ユーザー | 約1,200~6,000円/ユーザー |
会計ソフト (クラウド型) | 0円 | 1,000~3,000円/会社 | 約1万~3万円/会社 |
会計ソフト (インストール型) | 1万~数十万円(買い切り) | なし(買い切り型) | なし(都度バージョンアップ料) |
給与計算システム | 0円 | 300~500円/ユーザー | 約3,600~6,000円/ユーザー |
※上記は一般的なクラウドサービスの例です。
例えば勤怠管理システムは1ユーザーあたり月額料金が設定されていることが多く、社員数によって合計費用が決まります(利用人数が増えると割引があるサービスもあります)。会計ソフトのクラウド型は法人向けプランで月額数千円程度、個人事業主向けなら月額数百円から利用可能なものもあります。一方、インストール型(パッケージ型)は一度ライセンスを購入すれば基本的に追加料金なしで使えますが、最新版へのアップデート時には追加費用が発生することがあります。給与計算システムも勤怠と同様に従業員数連動の料金体系が多いですが、5名までは無料などのプランを提供しているサービスも存在します。
自社の規模や予算に合わせて、月額課金が良いか、買い切り型が良いかも検討しましょう。月額制は初期コストを抑えられますが長期では総額が大きくなる傾向があります。買い切り型は初期費用はかかるものの、その後のランニングコストを低く抑えられます。それぞれのメリットを踏まえ、総合的に判断することが大切です。
まとめ
バックオフィス業務の効率化は、企業全体の生産性向上につながる重要な取り組みです。勤怠管理・会計・給与計算といった日常的な事務作業にムダがなくなることで、従業員は本来注力すべきコア業務に集中できるようになります。結果として、ミスの減少や意思決定の迅速化、ひいては従業員満足度の向上にも寄与するでしょう。
効率化の鍵となる各種システムについて、ポイントを改めて整理します。
- 勤怠管理システム:
正確な勤怠把握と集計の自動化により、手間とミスを削減。テレワークやフレックス勤務など多様な働き方にも対応できるものを選ぶ。 - 会計ソフト:
経理業務の効率化と見える化を実現。クラウド型かオンプレ型か、自社に合ったタイプを選定し、日々の帳簿付けから決算書作成まで一元管理する。 - 給与支払いシステム:
煩雑な給与計算を自動化し、法令順守も確実に。勤怠システムとのデータ連携がスムーズなものを選び、毎月の給与処理にかかる負担を軽減する。 - クラウド vs オンプレ:
クラウド型は手軽で常に最新、オンプレ型はカスタマイズ性とオフライン利用可、といった特徴がある。それぞれの利点を活かし、自社に最適な形で導入する。
導入時には、費用面だけでなく操作性やサポート体制、将来的な拡張性も考慮しましょう。特にクラウドサービスは日々進化しており、新機能の追加や他サービスとの連携強化が続いています。まずは小さく始めて効果を実感し、必要に応じて段階的に導入範囲を広げるのも一つの方法です。
最後に、法人企業でも個人事業主でも、「効率化して浮いた時間=新たな価値創出の時間」です。バックオフィス業務の効率化によって生まれた時間とリソースをぜひ本業の発展に振り向けてください。業務改善の積み重ねが、ビジネス全体の競争力アップにつながるはずです。今日紹介したポイントを参考に、自社のバックオフィス業務を見直し、よりスマートな運営を目指してみましょう。
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