店舗を開業するにあたり、防犯・セキュリティ対策は売上やサービスと同じくらい重要な準備項目です。
万引きや侵入窃盗などの被害は経営に大きな打撃を与えかねません。
本記事では、店舗のセキュリティ対策について初心者にもわかりやすく、全体像から具体策まで解説します。防犯カメラの設置による監視、万引き防止の工夫、入退室管理システムの導入、警備会社のサービス契約といった主要施策を順に見ていきましょう。また、各対策の費用目安や導入の流れも紹介しますので、開業準備のチェックリストとしてぜひ活用してください。特に、防犯カメラの導入は基本中の基本ですので、開業時には優先して検討しましょう。
店舗セキュリティの全体像

店舗のセキュリティ対策は大きく分けて次の四つの柱があります。
- 防犯カメラによる監視・記録: 店内外にカメラを設置し、犯罪の抑止と証拠取得を行います。
- 万引き防止策: レイアウトの工夫やミラー設置、スタッフ対応で万引きを防ぐ対策です。
- 入退室管理: 従業員や関係者以外の立ち入りを制限し、裏口や事務所への侵入を防ぎます。
- 警備会社のサービス導入: 防犯センサーや緊急時の駆け付けなど、プロの警備システムを利用します。
これら複数の対策を組み合わせて実施することで、「見せる防犯」と「隠れた防犯」をバランスよく配置できます。
「見せる防犯」(犯人に存在が見える形で威嚇効果を狙う対策)と「隠れた防犯」(人目につかないセンサーなど裏側で機能する対策)をバランス良く組み合わせ、被害を未然に防ぐことが重要です。では、それぞれの施策について具体的に見ていきましょう。
防犯カメラの設置と活用

防犯カメラは最も基本的な防犯対策であり、設置場所を工夫すれば非常に大きな効果を発揮します。
例えば店舗では、レジ上部にカメラを設置するのが定番です。万が一強盗が侵入した際には真っ先にレジが狙われやすいため、レジ周りの監視は必須と言えます。また、防犯カメラの映像はスタッフの不正や接客トラブルの証拠としても活用できるため、従業員によるレジ金盗難など内部不正の抑止にも役立ちます。
加えて、出入口に向けてカメラを設置すれば来店者の顔を確実に記録でき、不審者の侵入や万が一事件が発生した際に映像証拠を提供できます。店内の売り場や死角になりやすい通路も複数台でカバーし、「見えていない場所はない」状態を目指しましょう。このように強い抑止力を持つ防犯カメラは比較的低コストで導入できるため、開業時にはぜひ優先して設置を検討しましょう。
カメラの種類にはバレット型(筒型)やドーム型などがあります。バレット型は遠くからでもカメラとわかる外観で威嚇効果が高く、屋外や駐車場などに向いています。ドーム型は天井に設置する半球状のカメラで、目立ちにくく壊されにくい利点があり、店内に適しています。それぞれ視野角や防水性能も異なるため、監視したい範囲や設置環境に応じて選びます。
また、録画方法にも違いがあります。従来型(ローカル録画)はHDDやSDカードに映像を保存し、ネットがない環境でも運用できます。ただしHDDは長時間稼働で劣化し故障のリスクがある点に注意が必要です。一方、クラウド録画対応カメラは映像をクラウド上に保存し、容量を気にせずデータを蓄積できます。インターネット経由で遠隔から映像を確認できるので、複数店舗を経営している場合でも一元監視が可能です(ただしネット回線が必要で、月額サービス費用がかかる場合があります)。
防犯カメラ設置のポイント:
- 重要箇所を優先:
レジ周辺、出入口、店内の見通しが悪い場所、バックヤードなど、被害やトラブルが起こりやすい箇所を中心に配置します 。 - 死角を作らない:
カメラの視野が届かない棚の裏やコーナーがないよう、必要に応じて複数台設置します。店舗レイアウトに合わせて画角の広いレンズや首振り可能なカメラも検討しましょう。 - 録画データの保管:
長時間の録画にはHDD/NVRを用いるか、クラウド保存サービスを活用します。クラウドなら機器盗難や故障の心配が少なく、遠隔監視にも便利です。 - 表示とプライバシー配慮:
「防犯カメラ作動中」のステッカーを掲示して犯行抑止につなげます。同時に、更衣室やトイレなどプライバシー空間には向けないなど、利用者の安心にも配慮します。
適切に設置されたカメラは犯行の抑止力になるだけでなく、万一事件が発生した際には解決の手がかりにもなります。防犯カメラの存在そのものが犯罪者に「見られている」というプレッシャーを与え、犯行を思いとどまらせる効果も期待できます。
万引き防止の工夫あれこれ

万引き被害を防ぐには、環境づくりと人の対応の両面から対策を行いましょう。
まず物理的な工夫として、店内レイアウトの最適化があります。商品の陳列棚は高さを極力低めにし、店員の視線を遮らないように配置します。背の高い棚が必要な場合も、入口から店内が見渡せるよう配置を工夫してください。また、柱や棚の陰になる場所には防犯ミラー(凸面鏡)を取り付けると効果的です。鏡越しに隠れたエリアも見えるようになり、店員の死角で万引きされにくい環境を作れます。特に狭い通路や商品が密集しているコーナーは、防犯ミラーで視界を確保しましょう。
さらに、「万引き防止」の注意喚起ポスターやステッカーを店内に掲示しておくことも有効です。警告の掲示物によって「この店は見られている」という心理的プレッシャーを犯行者に与え、万引きを思いとどまらせる効果が期待できます。
盗難リスクの高い商品は、陳列場所にも注意が必要です。高額商品や人気商品は入口付近ではなく店員から目の届くレジ周辺に置く、陳列棚の一番下段には置かない等、手に取った瞬間に店員の視線に入る配置にします。また、必要に応じて商品に防犯タグを付け、防犯ゲート(出口で未会計商品を感知するとアラームで知らせる装置)の設置も検討しましょう。防犯ゲートは万引き検知の精度を飛躍的に高められます。ただし、商品一つひとつにタグを貼る手間やゲート設置費用がかかるため、小規模店ではコストとの兼ね合いを見て導入を判断しましょう。
人的な対策も万引き防止には欠かせません。スタッフの配置と接客対応を見直すだけで被害が減ることも多々あります。店員がレジ周りに固まってしまい、フロアの巡回がおろそかになっていないでしょうか。スタッフは店内にバランス良く配置し、特定の場所に集中しすぎないようにします。また、定期的に店内を歩き回って巡回するだけでも抑止力になります。犯人に「常に誰かに見られている」と意識させることが大切です。
さらに、声掛けや挨拶の徹底もシンプルながら非常に有効です。警視庁の調査でも、「店員による声掛け」が万引き抑止要因の3割以上を占めたとの結果があり、警備員の巡回を合わせると6割を超える効果があったと報告されています。明るい挨拶や「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」といった一言で、お客様に安心感を与えるとともに、万引きを企てる人には「見られている」という意識を持たせられます。従業員には万引き被害の実情を共有し、怪しい動きがあれば声を掛けるよう教育しましょう。
万引き防止策のポイント:
- レイアウト最適化:
視界を遮る高い棚を減らし、店内の見通しを良くする。棚の陰になる場所には防犯ミラーを活用し死角をカバー。 - 重要商品の管理:
万引きされやすい高価格帯商品はレジから見える位置に陳列。ショーケースに入れる、タグを付けるなど盗りにくい工夫を施す。 - 人員配置と巡回:
店内に十分な目配りが行き届くようスタッフを配置し、定期的にフロアを見て回る。特に死角になりがちなコーナーには人の目を届かせる。 - 積極的な声掛け:
入店時の挨拶や商品の問い合わせなど、店員から積極的に声を掛ける。「この店は見られている」という雰囲気づくりが抑止効果を生みます。 - 被害発生時の対応:
万引きを発見した際の対応マニュアルも用意。安全を確保しつつ警察通報や証拠映像の保存など適切に行う。
小売店における万引き被害はゼロにすることが難しい課題ですが、以上のようなハード・ソフト両面の対策を講じることで被害を大幅に減らすことは可能です。大切なのは「万引きされにくい店」を作ること。常に店員の視線と適切な防犯設備が行き届いた環境で、犯罪を未然に防ぎましょう。
オフィス併設店舗の入退室管理

店舗の中には事務所やスタッフ専用スペースが併設されているケースも多く、そうしたエリアへの入退室管理もしっかり行う必要があります。入退室管理システムとは、「いつ・誰が入退出したか」を記録し、許可された人だけが特定エリアに入れるようにする仕組みです。物理的な鍵を渡す方法もありますが、鍵の紛失リスクや複製の不安がつきまといます。
近年はICカードキーやテンキー(暗証番号)式ロック、さらにスマートフォンアプリ連携型など、電子的に制御できるドアロックが普及しています。例えば、従業員にICカード(社員証や交通系ICカード)を持たせてドアを解錠するシステムでは、誰が入室したかログを残せるためセキュリティ性が高まります。
暗証番号式ロックは手軽に導入できますが、暗証番号が漏洩してしまうと誰でも入れてしまうリスクがあります。また、履歴から「誰が何時に入ったか」を特定しにくいという欠点もあります。そのため、定期的な番号変更や、共通番号と個人専用番号を併用するなどの工夫が必要です。
最近ではクラウド型の入退室管理システムも中小店舗で導入が増えています。クラウド型ではネットワーク経由で鍵の開閉や権限管理ができ、管理者は離れた場所からでもリアルタイムに入退室状況を把握できます。例えば、スマートロックをドアに後付けしておけば、スマホアプリで施錠・解錠が可能になり、従業員のICカードやスマホを登録しておくことで鍵を持ち歩かなくても入室が可能になります。遠隔から一時的な入室許可を出したり、退職者の権限をすぐ無効化したりといった柔軟な運用もクラウドならではのメリットです。
入退室管理システムの主な方式:
- ICカード式:
専用カードや社員証をカードリーダーにかざして解錠。カード紛失時はシステム上で無効化でき、不正利用を防止可能。複数人が頻繁に出入りする環境で広く利用。 - テンキー式(暗証番号):
ドアに取り付けたテンキーに暗証番号を入力して解錠。初期コストが低く導入しやすい反面、番号が漏れれば誰でも入れてしまうリスクあり。履歴も個人特定が難しいため、定期的な番号変更や共用と個別識別の工夫が必要。 - スマートロック(クラウド型):
ドアに電子錠を設置し、スマホアプリやWeb経由で解錠操作。ICカードや暗証番号による解錠にも対応する製品が多い。管理画面で入退室ログを一元管理でき、遠隔から権限付与・停止が可能。ネット環境と電源(または電池)が必要だが、利便性とセキュリティを両立できる。
店舗のバックヤードや従業員エリアにも、こうした入退室管理を導入しておくと安心です。万一営業時間外に侵入されても扉が電子的にロックされていれば被害を防げますし、「誰がいつ入ったか」が記録に残ることで内部不正の抑止にもつながります。
小規模店舗なら暗証番号式から始め、必要に応じてクラウド型にアップグレードするといった段階的導入も良いでしょう。大切なのは、お客様に立ち入ってほしくないエリアや、外部から侵入されやすい出入口にきちんと鍵を掛け、管理する仕組みを持つことです。
警備会社のサービス活用

最後に、民間の警備会社と契約してプロのセキュリティサービスを導入する方法です。セコムやALSOKに代表される警備会社のホームセキュリティ(機械警備)は、非常ボタンの押下やセンサーが異常を検知した際にガードマンが急行してくれるのが最大の特徴です。
店舗に各種防犯センサー(開閉センサー、モーションセンサー、ガラス破壊センサーなど)を設置し、異常発生時には警備会社の監視センターへ自動通報、必要に応じて警備員や警察が駆け付けます。人間の目と駆け付け対応がある安心感は、自力の防犯対策では得られない心強さです。
警備会社の契約プランにもよりますが、主なサービス内容としては以下のようなものがあります。
- 防犯センサー設置と24時間監視:
出入口や窓にセンサーを取り付け、営業時間外に侵入があれば即通報。火災報知機や非常ボタンと連動させることも可能です。 - 緊急時のガードマン駆け付け:
センサー異常や非常通報を受けた際、付近の待機所から警備員が現場へ急行します。状況に応じて警察や消防とも連携し被害拡大を防止。 - 巡回パトロール:
夜間や休業日に警備員が店舗周辺を巡回してくれるサービスもあります。不審者への威嚇効果や異常早期発見につながります。 - その他オプション:
防犯カメラの遠隔監視サービスや、金庫警報、非常時の電話呼びかけなど会社によって様々なオプションがあります。自店のリスクに合わせて追加できます。
契約にあたっては、まず警備会社に問い合わせをして現地調査・ヒアリングを行います。専門スタッフが店舗の構造や立地、想定されるリスクを確認し、「どこにどんなセンサーを設置するか」といった最適な警備プランを設計してくれます。その提案プランに基づき見積もりを確認し、問題なければ契約となります。
契約後、センサー類や警報装置の設置工事は通常1日で完了します(店舗の規模によっては数日かかる場合もあります)。工事完了時にはその場で動作確認を行い、すぐに警備システムの運用が開始されます。警備セットの方法や解除手順についても丁寧に説明があるので、初めて利用する場合でも安心です。
導入にかかる費用の目安:
警備会社の機械警備サービスは初期費用と月額費用が発生します。一般的な小型店舗向けプランでは、機器の設置費用・保証金など初期費用に5万~20万円程度、月々のサービス料は5,000~10,000円程度が目安です。
契約内容によっては警備員の駆け付け一回ごとに追加料金がかかるケースもあります。最近は初期費用無料で月額料金に組み込むレンタルプランも多いので、各社のプランを比較してみましょう。また契約期間が長期になるほど割安になる傾向があります。契約前には複数社から相見積もりを取り、サービス内容(対応スピードや補償制度)も含めて検討することをおすすめします。
導入までの大まかな流れは以下の通りです。
- 問い合わせ・現地調査依頼:
警備会社に連絡し、店舗の場所や規模、心配事を伝えます。担当者が来店し現地調査とヒアリングを実施。 - プラン提案・見積もり:
調査結果をもとに最適なセンサー配置図や警備プランが作成され、見積もり金額とともに提案されます。プラン内容(センサー種類や台数、対応範囲)と費用を確認します。 - 契約手続き:
提案に納得したら契約を結びます。開始日や緊急連絡先などを取り決め、工事日程を調整します。 - 機器設置工事:
約束の日に技術スタッフが来てセンサー類や警備システム本体を設置します。店舗の営業に支障が出ないよう短時間で完了することが多いです。 - 運用開始・説明:
工事完了後、その場で動作確認テストを行い問題なければ即日から監視が開始されます。同時に、警備をセットする方法(施錠・解錠操作や暗証番号入力など)をオーナーやスタッフに説明し、誤報が出ないよう教育します。
プロの力を借りる分コストはかかりますが、「人の目+機械」の二重防御によりセキュリティレベルは格段に向上します。
とりわけ深夜帯の侵入盗対策や、常時スタッフを置けない無人店舗の防犯には有効です。何より、万一の緊急時にプロの警備員が直接現場に駆け付けてくれるという安心感は、非常に心強いメリットと言えるでしょう。
まとめ
店舗のセキュリティ対策について、「防犯カメラ」「万引き防止」「入退室管理」「警備会社契約」の観点から解説しました。
これらはそれぞれ単体でも効果がありますが、複合的に実施することで相乗効果を生みます。例えば、防犯カメラの映像記録によって万引き犯を後日検挙できたケースがあります。防犯ミラーの設置と定期巡回によって犯行自体を未然に防いだ例もあるでしょう。さらに、センサーからの通報により夜間の侵入を素早く阻止できたケースも報告されています。このように複数の防犯策を重層的に講じておくことが被害防止には不可欠です。
開業当初は準備で手一杯かもしれませんが、セキュリティ対策は後回しにしないようにしましょう。犯罪被害は「うちの店は大丈夫」と思っている隙を狙ってやってきます。幸い、本記事で紹介したような基本対策を講じておけば多くのリスクは軽減できます。
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