新しく店舗を開業するとき、「どのエリアに店を構えるか?」は、成功のカギを握る大きな要素です。
特にクリニックや歯科医院などの業種は、出店後になかなか移転しにくいため、立地選びの段階で「本当に集客できるか」を見極めておく必要があります。もちろん、飲食店・整体・マッサージ店、さらには出張サービスなど、幅広い業種でもエリア選定が売上を左右するのは同じです。
本記事では、駅前・住宅地・商業施設といったエリア特性の整理や、路面店・空中店・地下店の物件種類別メリット、さらに人の流れを左右するトラフィックジェネレーター(TG)の考え方まで解説します。
加えて、立地選びで活かせるWeb活用術として、「Googleマップやストリートビューを使って現地の様子をバーチャル下見する」方法を紹介。この段階で「この立地ならどんな集客方法がイメージできるか」をイメージしておきましょう。
1. 立地選定の基本:エリアごとの特徴と注意点

「どのエリアに出店するか」で集客ポテンシャルや経営コストは大きく変わります。
まずは駅前・住宅地・商業施設内といった代表的なエリア別に、各エリアの特徴と向き不向きを見てみましょう。
駅前エリア(オフィス街・繁華街)
- メリット: 人通りが多く集客しやすい、営業時間問わず一定の利用客が見込める
- デメリット: 賃料が非常に高い。また競合店が多く、差別化戦略(【競合店リサーチ】が必要)を求められる。落ち着いた雰囲気は出しにくい。
- 向いている業種: 回転率重視の飲食店・小売店に最適。
- 不向きな業種: 競合が多い専門サービスは集客に苦戦する可能性あり。
住宅地エリア(郊外・ベッドタウン)
- メリット: 地域住民のリピート利用が狙える、賃料が比較的安い、競合が少ないエリアだと囲い込みやすい
- デメリット: 通行客の絶対数が少なく大きく稼ぎにくい、地元以外の層には認知されにくい
- 向いている業種: クリニック・歯科医院・学習塾など地元常連を狙う業態向き。
- 不向きな業種:大型チェーン店は客数不足の可能性あり。
商業施設内エリア(ショッピングモール・駅ビル等)
- メリット: 施設全体の集客力を利用でき、天候に左右されにくい
- デメリット: 運営ルールの制約が多く、テナント料や売上歩合などコスト面が特殊
- 向いている業種:チェーン展開の小売・飲食店は相性◎
- 不向きな業種:オーナーシェフ系や個性重視の店は自由度が低く不向き
2. 立地の種類と選び方:路面店・空中店・地下店

物件が建物内のどの階にあるかによって、お店の見つけやすさや賃料コストは大きく変わります。
それぞれ路面店(1階)・空中店(2階以上)・地下店のメリット・デメリットを知り、自店に最適な物件タイプを選びましょう。
路面店(1階の店舗)
- メリット: 通行人から視認性が非常に高く、フラッと入ってくる新規客を獲得しやすい。店舗の存在に気づいてもらいやすいため集客面で有利。
- デメリット: 賃料が最も高額になる。間口が広い物件が多く初期内装費も高め。収支バランス上、長時間営業や高単価サービスではコスト回収が課題。
- 向いている業種: 短時間で回転率を稼ぐ飲食店や物販店(例: カフェ、コンビニ)。宣伝費を抑えたい場合にも有効
- 不向きな業種: 高単価で予約制の業態(例: 美容クリニック、オーダーメイド家具店など)。コスト高に見合う集客が見込めない可能性。
空中店(2階以上のフロア)
- メリット: 賃料が路面店より安く、広さ・内装の自由度も高い。その分、広告宣伝など集客施策にコストを回しやすい。
- デメリット: 視認性が低いため、通行人の集客には工夫が必要。
- 向いている業種: 高級レストラン・バー、美容サロン、ショールームなど 「目的来店」 型の業態に向いている(※通りがかりの新規客より、予約や紹介で来店するビジネスに適している)。
- 不向きな業種:通りすがりの集客(飛び込み客)に依存するビジネスやバリアフリーが必須な業種は不向き。
地下店(B1階以下)
- メリット: 賃料が路面店より安く、遮音性も高いため、ライブハウスやカラオケなど音を出す業態に有利。
- デメリット: 視認性が低く通りすがりの客が入りづらいため、雰囲気にこだわる業態以外は集客面で不利。
- 向いている業種: 隠れ家バーや音楽スタジオなど 「雰囲気重視」 の業態に向く。
- 不向きな業種:ファミリー層・シニア層には敬遠されがち。
3. トラフィックジェネレーター(TG)の考え方

トラフィックジェネレーター(Traffic Generator、略してTG)とは、地域に人を集める施設や要因のことです。
- 典型的なTG: 駅、バスターミナル、ショッピングモール、大学、オフィスビル、観光名所、大きな交差点など
- 活かし方: TGの近くに出店すれば人の流れを取り込みやすく、集客に役立つ。逆にトラフィックジェネレーターとなる集客要因が全く無い場所では、人通りが極端に少なくなるため、それだけに頼らず別途集客施策が必須となります。
たとえば「駅とスーパーを結ぶ通り」であれば通行が多く、看板や店先で呼び込みしなくとも一定の顧客獲得が見込めます。
工務店の場合でも、周辺に大規模住宅街があればTG的に家づくり需要を捕まえやすいですし、歯科医院であれば駅前にバスターミナルがあるなど通勤客が集まる仕組みがあると通いやすいと評価されるでしょう。
お、候補エリアに人の流れを妨げる障壁(太い幹線道路や川、鉄道の線路など)がないかも要チェックです。せっかく近くにTGがあっても、物理的な障害で顧客が迂回せざるを得ない立地では集客効果が半減してしまいます。
4. 最低限チェックすべき統計情報(立地調査で重要)

立地の良し悪しは数字でも裏付けを取りましょう。
以下のようなデータは自治体や国の統計サイト(e-Stat、各市区町村公式サイトなど)で取得可能です。
年間小売業販売額
その地域の商業規模を示す指標。人口規模が似ていても販売額が大きければ「外部から消費を取り込んでいる商業エリア」と判断できます。
昼間人口・夜間人口
昼間人口が多いと、オフィス街や学校が集中する仕事・通学エリア。夜間人口が多いなら居住エリア。業種ごとに狙いたいタイミング(昼 or 夜)に合わせて選ぶ参考に。
人口推移(人口増減・将来予測)
人口が増加しているエリアは将来的な需要拡大が期待できます(新興住宅地なら若い家族層の増加など)。
逆に人口減少傾向だと要注意です。例えば高齢者向けのクリニック開業を検討している場合、その地域の高齢化率も併せて確認すると良いでしょう。人口構成の変化によってニーズが変わるためです。
乗降客数
鉄道駅での一日乗降客数。大きな駅ほど人が集まりやすいが、賃料や競合リスクも比例して上がるため注意。
こうした客観データを踏まえ、「今後どのくらいの需要が見込めるエリアか」をチェックするのが立地調査で重要です。
たとえばオフィス人口が多いなら昼間需要を狙える、ベッドタウンなら夕方~夜に通勤客や帰宅後の住民を狙うなど戦略を練る材料となります。
5. 立地選びで使えるWeb活用術:ストリートビューでバーチャル下見しよう

立地選びの段階で、将来的にどう集客するかイメージしておくのは大切です。
例えば、駅前なら「仕事帰りの通勤客向けにSNS広告」、住宅地なら「ポスティング+Googleマップ活用」など、エリアに合わせた集客プランを考えておけば出店後の行動がスムーズです。
一方、今の時点で使えるWebのメリットとして、Googleマップやストリートビューでのバーチャル下見があります。以下のような観点で活用すると、現地に頻繁に行けない場合でも立地の雰囲気や導線をイメージしやすくなります。
周辺の建物・道路状況をチェック
ストリートビューで、候補物件の正面道路の幅や通行人の様子(時間帯は古い場合もあるが目安にはなる)を確認。
隣接する建物の業種や看板を見て、競合店やトラフィックジェネレーターがないか探りましょう。
また、Googleマップの検索機能で周辺エリアの同業種店舗を調べてみると、地図上で競合の分布も把握できます。
視認性の高さ・看板の設置場所【現地での見え方確認】
路面店なら店頭に立ったとき、通行人からどれくらい見える位置か? 電柱や樹木に視界が遮られていないか?
交差点の角地なのか、細い路地なのか、曲がり角を曲がってすぐなのかなど、詳細な地形が確認できる。地図だけでは分からない「看板が見えるタイミング」をストリートビューでイメージできる。
最寄り駅やバス停からの導線
ユーザー目線で駅から歩くルートをストリートビュー上で仮想散策してみる。
歯科クリニックなら患者さんが駅から徒歩で来る場合、どこで曲がるか、途中に段差や暗い道はないか確認する。工務店ショールームなら大きいサインをどこに置くべきかを構想する。
公共施設や商業施設までの距離
周辺にある学校・市役所・スーパーなどTGをストリートビューで見つけ、「どの道を通って人が移動するか」を把握。
事前にそこを下見して実際の人の流れを確認する段取りを立てる。
このように、ストリートビューを使えば実地視察に行く前から候補エリアの街並みをある程度把握でき、複数候補地を同時に検討する際の比較にも役立ちます。
ただし写真が撮影された時期によって古い情報である場合もあるため、最終的には必ず現地訪問を行うのが原則です。その際に事前イメージと実際の違いをチェックし、目的とする客層が通る導線や時間帯を確認するとよいでしょう。
6. 今後の集客手法(Web集客・ローカルSEO等)は軽くイメージしておこう

立地選びが終わってから具体的に販促やWeb対策を始めるケースが多いですが、エリア特性によって使いやすい集客施策は変わります。今のうちに「ここに出店したらどうやって集客するか?」をイメージしておくと、物件契約や内装計画の段階から必要な準備(看板スペース、駐輪場設定など)がスムーズです。
主な集客方法(一例)
ポスティング・チラシ:
周辺住宅地へのポスティングや駅前でのチラシ配布。低コストで地域密着型ビジネスに相性がよい。
ローカルSEO(MEO・Googleマップ対策):
マップ利用者にアピールする注目の集客手法。事例はこちらから。
SNS運用(Instagram・Facebookなど):
飲食店や美容系なら視覚的訴求が有効。工務店なら施工事例をビフォーアフターで載せる等、顧客に応じた運用が必要。
リスティング広告:
地域名+業種キーワードの検索広告は有力手段。ただし高コストになる場合もあるので計画的に。
看板・サインボード:
視認性の確保が必要。路面店なら壁面看板、空中店や地下店ならポール看板や袖看板で誘導。出張サービスも車への広告ラッピングなど考えられる。
これらは立地選びの段階では「こんな集客が可能かもしれない」程度のざっくりイメージでOKです。
詳細なノウハウや手順(MEOの具体的設定、SNS広告の運用方法など)は別途解説します。
まずは候補地で狙える顧客層や時間帯、交通手段を踏まえ、「自店のお客様はこういうルート・こういう方法で来店してもらうだろう」という仮説を立てておきましょう。
場所が変われば販促プランも変わってくるので、これが「この立地で本当に集客できるか?」の検証材料にもなります。
7. まとめ:失敗しない立地選びのチェックリスト
最後に、「立地選びで最低限押さえておきたい項目」をチェックリスト形式で整理します。
- 駅前、住宅地、商業施設内など、各エリアの特徴を理解し、自店に合うか検討
- 候補エリアの商業集積度や競合状況を調べ、人通りと賃料のバランスを見極める
- 視認性重視で路面店を選ぶか、賃料を抑えて空中店や地下店にするか検討
- 希望コンセプトや顧客層に合った階数か確認(隠れ家的業態なら2階以上等)
- 候補地周辺に駅、大学、商業施設など人を呼び込む施設があるか把握
- 地図や現地で人の動線をチェックし、自店へどう誘導できるかイメージを描いておく。
- 【年間小売業販売額】【昼間人口・夜間人口】【人口推移】【乗降客数】など数値で裏付け
- 特に客単価の高い業態は人口推移や所得水準なども要チェック
- Googleマップ・ストリートビューを活用して候補地の街並み、看板の見え方や導線を仮想的に体験
- 現地視察前に複数の候補を絞り込み、時間と手間を節約
- ポスティング、MEO、SNS、看板など、エリア特性に合わせた販促をざっくり想定
- 開業後に慌てないよう、「この立地ならどんな集客施策が有効か」をあらかじめ頭に入れておく。
上記のチェック項目をクリアし、「ここなら自分のビジネスコンセプトとターゲットにマッチする」という手応えが得られたら、いよいよ本格的に契約や内装計画へ進む段階です。
立地は一度選ぶと簡単に変えられないからこそ、「集客できるかどうかを見極める」ための立地調査は絶対に手を抜かず、じっくりと行いましょう。
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