不動産会社の開業準備では、どの範囲の物件を扱うかを早い段階で決めることになります。免許の申請にも事務所の場所が必要で、事務所の場所が決まれば自然と扱うエリアも定まってくるためです。
問題は、その対応エリアをWeb上でどう表現するかです。ここでよくある誤解が、Googleマップの「サービス提供地域」を使ってしまうというものです。
ここでは、対応エリアの決め方と、地図上での正しい表し方を整理します。
先に結論:サービス提供地域は、出向いて仕事をする業態のための機能です
Googleビジネスプロフィールには、サービス提供地域という設定項目があります。ここに市区町村を並べると、その地域で探している人に見つけてもらえそうに思えます。
ただ、Googleが公開している説明では、この機能は非店舗型とハイブリッド型のビジネス、つまり顧客のところへ出向いて商品やサービスを提供する事業のためのものだと明記されています(Google ビジネス プロフィール ヘルプ「非店舗型ビジネスとハイブリッド型ビジネスのサービス提供地域を管理する」)。実店舗型のビジネスは、拠点の住所で接客することが前提とされています。
宅地建物取引業では事務所の設置が前提のため、来店してもらう実店舗型にあたります。営業したい地域を並べる場所として使うものではありません。
サービス提供地域の仕様を、正確に押さえておく
同じヘルプページには、次の点も書かれています。誤用を避けるうえで知っておく価値があります。
登録できるのは最大20か所です市区町村や郵便番号で指定します。県内すべてを並べるといった使い方は、そもそも件数の面で成立しません。
拠点からの半径距離では指定できません「事務所から5km圏内」といった円での指定はできない仕様です。地名単位での指定になります。
全体の境界は、拠点から車で約2時間以内に収めるよう案内されています出向いて仕事をする範囲という前提が、この目安に表れています。
このように、そもそもの設計が「客先に出向く事業」を想定した機能です。仲介の内見で物件へ同行する場面はあっても、契約の場は事務所です。ここを取り違えると、地図上の表示が想定と違う結果になることがあります。
では、対応エリアはどこで表現するのか
事務所の住所は動かせません。それでも、扱うエリアをWeb上で伝える方法はあります。
ホームページのエリア別のページ「◯◯駅周辺の賃貸」「◯◯町の中古戸建て」のように、地域ごとにページを作ります。地域名で探している人が最初にたどり着く場所は、地図ではなく検索結果であることが多いためです。ページの構成の考え方は不動産開業時のホームページ立ち上げと反響導線で詳しく触れています。
Googleビジネスプロフィールのビジネス情報と説明文サービス提供地域ではなく、ビジネスの説明文の中で扱う地域に触れます。ここは自由に書ける欄です。
地図上での基本の整え方は不動産会社の開業時にGoogleビジネスプロフィールを整える手順にまとめてあります。地図経由での見つかりやすさそのものについては、360株式会社がGoogleマップ対策の代行を行っており、地域集客の設計はそちらでも扱っています。
物件情報の掲載先ポータルサイトに掲載する物件のエリアが、実質的な対応エリアの表明になります。自社サイトとポータルの役割分担は、開業前に決めておくほうが動きやすくなります。
対応エリアそのものを、開業前にどう見極めるか
事務所の場所が決まっていても、そこから扱う範囲をどこまで広げるかは判断が要ります。開業前に確認できることがあります。
その地域で何が検索されているか「(駅名) 賃貸」「(地域名) 中古マンション」のように、地域名と物件種別を組み合わせて検索します。上位に並ぶのがポータルサイトばかりなのか、地元の会社が入っているのかで、自社サイトで入り込む余地が変わります。地域ごとの需要の大きさを比べるときは、検索ボリュームの考え方が目安になります。
地図上に同業が何社あるかGoogleマップで対象エリアの不動産会社を検索し、口コミの件数と評価を見ます。件数が二桁に届いていない会社が並ぶ地域は、開業直後でも地図経由で見つけてもらえる余地があると考えられます。
賃貸と売買で、範囲の広さが変わることを織り込む賃貸は駅単位・沿線単位で探されることが多く、範囲は狭くなります。売買は予算と条件が優先されるため、探す側の範囲が広くなりがちです。どちらを主軸に置くかで、対応エリアの引き方が変わります。
地域の人口構成や世帯の状況をまとめて把握したいときは、360株式会社が公開している商圏調査のツールもご利用いただけます。地図上で範囲を指定して、その中の統計を確認できるようにしたものです。
開業支援の現場で見てきたこと
ここからは、360株式会社が不動産会社の開業期に関わるなかで観察してきたことを書きます。
サービス提供地域を営業希望エリアとして設定していた会社が、一定数ありました開業時に自分で登録した会社に多く見られました。地図上での効果が実感できないという相談から、設定を確認して分かるという流れです。仕様どおりの使い方に戻したうえで、エリアの表現はホームページ側へ移すという整理をしています。
事務所の近くから順に反響が入るとは限りませんでした沿線が通っている方向、あるいは大きな川や幹線道路で生活圏が切れている場所があると、距離の順番と反響の順番は一致しませんでした。地図を見て距離を測るより、その地域の人がどこへ通勤・通学しているかを見たほうが、実態に近い見立てになると感じています。
エリアを狭く構えた会社のほうが、最初の1年の立ち上がりが早い印象があります広く構えると、どの地域でも情報量が薄くなります。特定の駅や町に絞ってページと物件情報を厚くした会社は、その地域名での検索で早い段階から見つかるようになりました。エリアは後から広げられますが、狭めるのは難しいと考えています。
これらは支援先で見えた傾向であり、地域性や取扱物件による差もあります。私見として受け取っていただければと思います。
よくある失敗
サービス提供地域に市区町村を並べて、そのまま放置してしまう実店舗型のビジネスとして登録している場合、この欄が想定どおりに働かないだけでなく、住所の表示のされ方に影響することもあります。開業時の設定は、一度見直しておく価値があります。
エリアを決める前に、ホームページの制作を発注してしまう対応エリアはサイトの構成そのものに関わります。エリア別のページを何本作るかで、費用も納期も変わります。
制作の依頼前に見立てを持っておくほうが手戻りがありません。開業までの順番の整理は不動産会社 開業前のWeb準備で扱っています。
実績がない時期に、エリアの広さで勝負しようとする開業直後は取引実績がないため、依頼する側から見て判断材料が足りません。人は分かりやすい一つの要素で全体を評価しやすく、これはハロー効果と呼ばれます。対応エリアの広さは、その要素として働くこともあれば、地元感の薄さとして働くこともあります。
まとめ:最初の一手
まず、Googleビジネスプロフィールを登録する前に、自社が実店舗型に該当することを確認しておくことをおすすめします。ここが定まっていれば、サービス提供地域を使うかどうかで迷うことがなくなります。
そのうえで、対応エリアは地図ではなくホームページ側で表現すると決めてしまうと、開業までにやることの順番が見えてきます。事務所の場所は動かせなくても、どの地域の情報を厚くするかは自分で選べます。


