飲食店の開業を控えた方から、「店名はどう決めればよいでしょうか」というご質問をいただくことがあります。内装や仕入れの検討に比べると後回しにされやすい部分ですが、店名は開業後に変えることが最も難しい要素のひとつです。看板も食器も印刷物も、そしてWeb上の情報も、すべてが店名を前提に積み上がっていきます。
店名は「響き」より「見つけてもらえるか」で決まります
結論から申し上げると、店名を決めるときに確認すべき視点は三つあります。検索で見つけてもらえるか、Googleマップに正しく載せられるか、他社の権利とぶつからないか。この三つを開業前に通しておくだけで、後から効いてくる手戻りの多くを避けられます。
なぜ開業前に確認するのか
飲食店を探す人の多くは、地図アプリや検索から店にたどり着きます。ここで問題になるのが、口頭で聞いた店名を正しく入力できるかどうかです。読み方が難しい漢字、聞き取りにくい外国語、既存の有名店と紛らわしい名前は、それだけで検索から漏れます。紹介された人が店名を打ち込めなければ、その紹介は届かなかったのと同じことになります。
見た目や名前から受ける第一印象が、料理や接客の評価にまで影響することもあります。ある一点の印象が全体の評価を左右する働きをハロー効果と呼びます。店名は、来店前の期待値を最初に決める要素です。高級感のある名前は期待を上げ、その期待に見合わない価格帯だと違和感になります。名前と業態の距離感は、開業前に確かめておく価値があります。
開業前に通しておきたい三つの確認
ひとつ目は、検索での確認です。候補の店名と地域名を組み合わせて実際に検索し、同名・類似名の店がすでにあるかを見ます。同じ商圏に似た名前の店があると、口コミも地図情報も混ざり、開業後にずっと不利を背負うことになります。
考えた店名が実際に検索で見つかるかどうかは、Googleマップで同じ地域に似た名前の店がないかを調べると分かります。店名チェックで、地名と屋号と業種を入れるだけで確認できます。
二つ目は、Googleマップ上の表記です。Googleビジネスプロフィールには名前に関するガイドラインがあり、実際に使われている正式なビジネス名を掲載することが求められています。キーワードや所在地を店名に付け足す表記は認められておらず、違反した場合は情報の掲載が制限されることもあります。つまり「◯◯駅前 安い 居酒屋◯◯」といった検索対策のための名前は、そもそも登録できません。地図検索での上位表示、いわゆるMEOは、店名に詰め込むのではなく、カテゴリや写真、口コミといった別の要素で積み上げていくものだと考えたほうが確実です。
三つ目は、商標の確認です。商標は特許庁が所管しており、すでに登録されている商標は特許庁の検索サービスで調べられます。開業後に名称の変更を求められると、看板から包材まで作り直しになります。飲食店は店名を印刷物や什器に載せる範囲が広いため、他の業種よりも影響が大きい部分です。判断に迷う場合は、弁理士など専門家に確認するのが確実です。
よくある誤解
店名にキーワードを入れれば検索に強くなる、という考え方をいまだに耳にします。しかし前述のとおり、地図上の表記ではガイドラインに反します。実際の運営を見ていても、名前で無理をした店より、覚えやすく、口に出しやすく、正しく打ち込める名前の店のほうが、結果的に検索からの来店を積み上げています。
まとめ
店名は開業後に変えることが難しい分、開業前の数時間の確認が長く効いてきます。検索してみる、地図の表記ルールに照らす、商標を調べる。この三つを通した名前は、開業後に足を引っ張りません。響きの良さは大切ですが、見つけてもらえることと両立させておくことが、飲食店の店名選びでは何より重要です。


