Web予約を導入したのに予約数がほとんど変わらず、受付の電話は相変わらず鳴り続けている——クリニックや歯科医院からお聞きするご相談で、これはかなり多い部類に入ります。
結論を先に申し上げます。この状態で見直す価値が高いのは、予約システムそのものではなく、検索した患者さんが予約を完了するまでにたどる経路です。多くの場合、システムは正常に動いており、そこへたどり着く手前で人が離れています。
なお、診療内容や医療機器、院内の運用手順そのものは私たちの専門ではありません。この記事では、Webからの経路と情報の見せ方に絞ってお話しします。
患者さんは、院名を知らないまま探し始める
近隣の医院を探すとき、多くの方は院名ではなく「地域名+歯科」「地域名+内科」のような形で検索します。その結果、最初に目に入るのはホームページのトップページではなく、地図と一緒に表示されるGoogleビジネスプロフィールの情報であることが少なくありません。
Googleビジネスプロフィールには、外部の予約ページへ誘導するための予約リンクを設定できる項目が用意されています。ここが空欄のままだと、患者さんは電話番号を押すか、ホームページを開いて予約ページを探すことになります。
つまり、最初に見られている画面に予約の入口が無い状態が起きやすいのです。Web予約の申込数を、訪問した人のうち何割が予約まで進んだかというCVR(コンバージョン率)の観点で眺めると、離脱がどこで起きているかが見えてきます。
私たちが見てきた限り、落ちるのは「経路」で決まっている
ここからは私見です。360株式会社が店舗や医院のWeb動線に関わってきた中で、予約が伸びない医院と伸びる医院の差は、システムの機能差よりも経路の長さに現れます。
検索結果から予約完了までに何回タップするか。 ここが5回を超えると、途中で戻ってしまう方が目に見えて増える印象があります。トップページ→診療案内→初診の方へ→予約ページ→カレンダー、という順路は院内の説明としては自然ですが、初めての方には長い道になります。
もうひとつ、意外に見落とされているのが予約ページが「誰の予約か」を分けていないことです。初診と再診、そして自費のご相談は、必要な情報も所要時間も違います。ひとつの入力フォームに全部を通そうとすると、項目が増え、初めての方が最も離脱しやすくなります。
通説では「予約システムを入れれば電話が減る」と語られがちですが、実際には電話が減らない医院も珍しくありません。私たちは、これは導入の失敗ではなく、電話でしか判断できない情報が残っているサインだと考えています。
見直す順番
予約の入口を、最初に見られる場所へ置く。 Googleビジネスプロフィールの予約リンクを設定し、ホームページはトップの目立つ位置に予約ボタンを置きます。診療案内の下ではなく、開いてすぐ見える場所です。
予約の種類を先に分ける。 「初めての方」「再診の方」「自費のご相談」のように入口で分岐させると、入力項目をそれぞれ最小限にできます。初診の方の入力が短くなるほど、完了率は動きます。
電話予約は残したまま、役割を分ける。 ご高齢の患者さんが多い医院で電話をなくすと、単に取りこぼしになります。私見ですが、電話は「判断に迷う方の相談窓口」、Webは「決めた方の枠取り」と役割を分けたほうが、受付の負担は減りやすいと考えています。
次の来院の案内を、予約完了の直後に置く。 予約が取れた瞬間は、患者さんが最も関心を持っている時間です。定期的な検診やメンテナンスの周期を案内するなら、この位置は有効です。継続的な来院が収益の土台になる仕組みは、LTV(顧客生涯価値)から医院のWeb設計を考える記事でも扱っています。
スマートフォンで通しで試す。 院内のパソコンでは問題なく見える予約ページが、スマートフォンでは日付の選択部分が画面からはみ出している、ということは実際に起こります。表示速度やスマートフォン対応をまとめて点検したい場合、360株式会社ではホームページの健康診断というサービスでこの種の確認を行っています。
電話が減らないのは、書かれていない項目があるから
Web予約を入れても電話が鳴り続ける医院では、電話の内容を数日分だけ書き出してみると原因が見えてきます。私たちが伺う限り、質問はおおむね決まった項目に集中します。
初診で何を持っていけばよいのか。保険証や紹介状、他院で受けた検査の結果は必要なのか。おおよそどのくらい時間がかかるのか。駐車場はあるのか、満車のときはどうすればよいのか。子どもを連れて行ってよいのか。この種の質問は、答えが決まっているにもかかわらず、ホームページに書かれていないことが多い項目です。
予約の手前で判断できない項目が残っている限り、電話は減りません。 電話をかける方は予約を渋っているのではなく、予約してよいかを確かめています。ここを書き足すことは、受付の負担を下げる作業でもあります。
あわせて、予約枠をどこまで先まで公開するかも見直す価値があります。直近数日分だけを公開している医院では、仕事の都合で先の日程を押さえたい方が予約できません。逆に何か月も先まで開けていると、直前の変更が増えます。私見ですが、2〜3週間先までを目安に公開し、そこから運用の実感に合わせて調整するのが扱いやすいと考えています。
よくある失敗
- 予約ページのURLをホームページの中だけに置く。 検索結果や地図から直接来た方には届きません。
- 入力項目を最初から充実させる。 問診に必要な情報を先に集めたい気持ちは分かりますが、項目が多いほど初診の方は離れます。来院時に伺える内容は、来院時で構いません。
- 電話をなくして予約を一本化する。 客層を確認せずに切り替えると、予約が減ることがあります。
- 予約枠を実態より少なく公開する。 空きが無いように見える状態が続くと、次から探されなくなります。
まとめ
最初の一手として申し上げたいのは、ご自身のスマートフォンで「地域名+診療科」と検索し、そこから予約完了まで一度通してみることです。何回タップしたか、どこで迷ったかを数えるだけで、直すべき場所はほぼ特定できます。院内のパソコンではなく、外に出て、電波の状況も含めて試すと違いが分かります。
予約は、システムを新しくして増えるものではなく、経路が短くなって増えるものだと私たちは考えています。なお、Googleの仕様や管理画面の項目は更新されることがあります。設定を確認する際は、その時点の公式情報をご確認ください。


